鋭いスパイクも、相手の完成度の高いブロックの前では弾き返されることがあります。そこで勝敗を分けるのがブロックフォローです。ブロックで跳ね返ったボールを自陣で素早く拾い、二次攻撃へとつなぐカバーリングは、失点を防ぐだけでなく流れを引き寄せる攻撃再構築の技術です。
本記事では、最新の考え方にもとづき、定義やルールの要点、ポジション別の配置、状況別の型、実戦的な練習法までを丁寧に解説します。
目次
ブロックフォロー バレーの基本と目的
ブロックフォローは、味方のスパイクが相手ブロックで跳ね返った際に自陣でボールを拾い上げ、素早く次の攻撃へとつなぐカバーリングを指します。ブロックされた瞬間を終わりにせず、チャンスに変える守備から攻撃への移行技術であり、サイドアウト率やラリー勝率の改善に直結します。
相手ブロックの角度、跳ね返りの高さ、ネット際の競り合いを即座に読み、第一カバーが低い姿勢で反応、第二カバーがこぼれ球を保険し、第三カバーが二段トスに備える、という層構造で成功率は大きく伸びます。
ルール面の要点として、相手のブロックは相手チームのプレーとみなされるため、こちら側はブロック後のボールを拾ってからも最大三回のチームコンタクトが使えます。この前提を理解すると、慌てた返球ではなく、質の高い二段トスと再攻撃の組み立てに余裕が生まれます。
目的は一貫して、拾ってつなぎ、整えて突き刺すこと。単なる反射ではなく、役割分担と配置、声かけを伴う組織的スキルとして練度を高めることが重要です。
定義とルールの押さえどころ
ブロックフォローはスパイクカバーとも呼ばれ、相手のブロックで戻ったボールを自陣で処理する一連の動きです。第一カバーはアタッカーの足元からネット際1メートル前後に半円を描く位置取り、第二カバーは3メートルライン沿い、第三カバーはバックコート中央付近を基本とします。
相手のブロック接触は相手のプレーのため、こちらはカバー後に三回のプレーが可能です。余裕を意識し、上げて整える判断を優先しましょう。
競り合いでネット際に落ちる短い球は、手のひらでのパンクや小さなオーバーハンドで上げるのが実用的です。高く上げるよりも、セッターの取りやすい頭上目標へコントロールすることが期待値を上げます。
カバーは守備ではありますが、狙いは攻撃の再開。つなぐ高さと質、次の一手を見据えた配球準備まで含めるのが最新の考え方です。
成功を左右する三層カバーの考え方
第一カバーは最短距離で触れる人、第二カバーは第一のこぼれに備える人、第三カバーは万一の長いはね返りと二段トスの準備、と明確に役割を分けます。この三層が重なり過ぎると穴が生まれ、離れ過ぎるとつながりが切れます。
理想は各層が約1〜2メートルの間隔で扇状に広がり、ボールの跳ね返り角度を扇で包み込むイメージ。声とハンドサインで重複を減らしましょう。
第一は低い姿勢と小さな足運び、第二は中間の間合い管理、第三はセットアップの優先順位が鍵です。どの層も攻撃の次手を思い浮かべながら、上げる方向を共有しておくと連動がスムーズになります。
ブロックフォローとレシーブの違い
共通するのは低い重心と面の安定ですが、カバーは起点がネット際に近く、反応時間が極端に短いのが特徴です。レシーブのように守備範囲を広げるより、最短で触ることが求められます。
もう一つの違いは上げる質。ディグでは高い山を作る選択が多いのに対し、カバーではセッターが触りやすい高さと方向へ短いコントロールが優先されます。
したがって、肘の角度を固定しやすい短いプラットフォーム作りや、指を柔らかく使うオーバーハンドの練習頻度を増やすことが効果的です。意図を持ってつなぐことが、次の攻撃の質に直結します。
ポジション別の配置と動き方

配置は攻撃方向とローテーションで細かく変わりますが、原則は一定です。アタッカー近傍の第一カバーはオポジットや同サイドのバックプレーヤー、第二カバーはリベロもしくは反対側のサイド、第三カバーはバックセンターが担います。
セッターは配給優先ですが、ネット際の短いこぼれ球に対しては右手前の浅い位置で即応できると安定感が増します。
ミドルブロッカーは助走の戻りを短く保ち、ブロックの脇に発生するカバーの穴を閉じるのが役割です。特にクロス側へのはね返りは角度がつきやすいため、半身で内側を締める立ち方を心がけましょう。
以下の表は、一般的な役割と層の対応の目安です。チームの特徴や狙いに合わせて微調整してください。
| 役割 | 第一カバー | 第二カバー | 第三カバー |
|---|---|---|---|
| レフト攻撃時 | レフト後衛・オポ | リベロ・MB内側 | バックセンター |
| ミドル速攻時 | セッター・反対サイド後衛 | リベロ・オポ | バックセンター |
| ライト攻撃時 | ライト後衛・レフト後衛 | リベロ・MB内側 | バックセンター |
アウトサイド攻撃時の基本配置
レフト攻撃では、同サイドのバックプレーヤーがアタッカーの足元から1メートル圏に扇形で第一カバー、リベロは3メートルライン上に第二カバー、バックセンターは5〜6メートルで第三カバーが基本です。
ブロックの外側からのはね返りに対し、ライン側は少し深め、クロス側は浅めに立つと角度にマッチします。
ライト攻撃なら配置は鏡写し。特にセッター前衛の場合、ネット際の短い球に対してセッターが第一カバーに入れると安定します。逆にセッター後衛では、オポジットが第一、リベロが第二の比重を高め、セッターは二段に専念する選択が現実的です。
ミドルとセッターの役割連携
ミドルはブロック参加後の着地から半歩で内側の穴を塞ぐ意識が重要です。相手のダブルブロックで内側にはね返る確率が高く、ミドルの半身低姿勢カバーがラリー継続の鍵となります。
セッターは、触るか触らないかの判断を早く。第一カバーを一瞬だけ見て、入るならすぐ、入らないなら二段配球地点へ退避して高さを確保します。
両者の声かけは短く具体的にします。ミドルは内、セッターは外、のように合言葉を決め、競合を減らしましょう。競合が減るだけで成功率は上がります。
リベロ活用と二段構えの考え方
リベロは第二カバーの軸です。第一が触れなかった際の保険と、拾った直後の二段トスの両方を想定して位置を取ります。3メートルライン上のクロス寄りは、短長どちらにも反応しやすい万能ポジションです。
触った後は、無理に返さず、セッターまたは決めた二段トスの目標へコントロールすることを優先します。
二段構えとは、第一で上げ切る案と、上がらなかった時の二段配球案を同時に持つこと。誰がトスを上げ、誰に返すかを事前にルール化するだけで動きは整います。シンプルに、セッター不在時はリベロが配球の第一候補、次点は同サイド後衛などの基準を決めておきましょう。
状況別の型と判断基準

カバーの最適解は攻撃の種類と相手ブロックの形で変化します。レフトの高い打点、ミドルの速攻、ライトのパワー、バックアタックでは、跳ね返りの角度と速度が異なるため、扇の広げ方や深さを調整します。
また、相手がシングルかダブルか、ワンタッチ狙いか、手の形や肩の向きから跳ね返りの方向を事前に読み、半歩先に構えることが習熟の近道です。
もう一つの判断基準は、誰が二段を上げるかの優先順位。セッターが遠いならリベロ、リベロが遠いなら同サイド後衛、といった簡潔な優先表の共有が混乱を減らします。状況の型を知り、ルールで迷いを消すことが成果に直結します。
レフト攻撃とライト攻撃の型
レフト攻撃はクロスが広く、跳ね返りは内側に落ちやすい傾向があります。第一カバーはクロス側を浅くカバー、第二はライン側をやや深めで扇を広げます。ライト攻撃は逆にライン側の短いはね返りが増えるため、第一はライン短め、第二はクロスを深めに。
どちらも第三はバックセンターで高さ確保、二段の配球優先です。
相手が手首を内に絞っている時は内側に、指先が外に向くと外側へ弾かれやすい、といった読みも有効です。アタッカーのコンタクト点が低いほど跳ね返りは短くなるため、第一の距離を一歩詰める判断が有利に働きます。
ミドル速攻とブロードの型
ミドル速攻では、球速が速く、ネット際の短い球が増えます。セッターが第一、ミドルが内側、リベロが3メートルライン中央で保険という三角形で包み込む形が実戦的です。
ブロードでは横移動が大きいため、第一は助走終端に合わせて移動、第二は進行方向のやや外側、第三はバックセンター定位置で二段へ備えます。
いずれも、上がった後に誰へ返すかを事前に一任しておくと、速攻からでもスムーズに再攻撃へ移行できます。ミドルが次攻撃に絡めない場合は、両サイドへの高めの二段を優先し、時間を作る発想が安定します。
ブロックの形状読みと半歩の先取り
手の出方で跳ね返りは変わります。閉じたダブルは内側短め、開いた手は指先で外へ長く、遅れたシングルはブロッカーの肩の向きへ飛びやすいのが典型です。
第一は相手の手の形を見て、扇の中心を半歩ずらす。第二はその逆側を深く。第三は高さと中央を死守。この半歩の先取りがカバー成功率を押し上げます。
読みは外れることもありますが、層構造で保険が効きます。読みを共有し、外れた時の声かけを即時に行えば、次のラリーで調整が効きます。
上達のための練習メニューとコーチング
カバーは反復による自動化が鍵です。個人のリアクション、ユニットの配置、チーム全体の二段移行を段階的に積み上げると、試合で迷いが減ります。
短い時間で高頻度の反復が可能なドリルを主軸にし、ゲーム形式で意思決定を鍛える構成が効果的です。評価は成功数だけでなく、上げた後の配球の質まで含めて行いましょう。
コーチングの観点では、合図の統一、優先順位ルールの明文化、動画での確認が効果的です。声かけの短文化、位置取りの基準化により、個の反応を組織の反応へと昇華できます。
反復ドリル3選
一つ目はネット際リバウンド対応。コーチがブロックに見立ててボールを押し返し、第一が低姿勢で拾い、リベロが二段を上げ、サイドが決め切るまでを10本連続で回します。短い距離の反応と配球の質を同時に鍛えます。
二つ目は三層扇ドリル。三人で扇を作り、角度を変えた跳ね返りを指定しながら拾い続ける反復で、間合い管理を体に入れます。
三つ目はゲーム内制約ドリル。攻撃がブロックされたら必ず三回目で決め切る、二段は同サイド優先、などの制約を課し、意思決定と連動を強化します。計測はカバー後の得点率で行うと、成果が明確になります。
コーチングのチェックリスト
- 第一はアタッカーの足元1メートル圏、膝はつま先の上、面は早く作る
- 第二は3メートルライン上で扇を広げ、こぼれと二段の両睨み
- 第三は中央高め、二段優先で無理な返球を避ける
- セッターの入る入らないを短い合図で統一
- 誰が二段を上げるかの優先表を共有
- 上げた後の配球目標を事前に明文化
映像確認では、接地点からの距離、膝角度、面の向き、配球の高さの四点を固定指標とします。改善は一度に一項目に絞ると定着が早まります。
安全な倒れ方と手技の習得
短い球に間に合わせるためには、前方へのスライドやパンクが必要です。前掌でのパンクは指を少し反らし、手のひら全体でクッションを作ると反発を抑えられます。
前方スライドは膝と脛でなく太もも外側から接地し、上半身をやや斜めに倒すフォームが安全でボールコントロールも安定します。
オーバーハンドで拾う場合はボールの真下で三角を作り、肩の力を抜いて肘で衝撃を吸収。反則を避けるため、キャッチのような静止時間を作らず、連続動作で送り出す感覚を身に付けましょう。
まとめ

ブロックフォローは、守備の終点ではなく攻撃再開の起点です。三層の役割分担、半歩の先取り、二段の優先順位という三本柱を整えるだけで、ラリー継続と得点化は目に見えて向上します。
ルール上の余裕を理解し、落ち着いて質を上げること。最新の配置とドリルを取り入れ、声と位置の基準をチームで共有しましょう。
今日からできる実行ポイントはシンプルです。第一は足元1メートル圏、第二は3メートルライン上、第三は中央高めで二段優先。誰が二段を上げるかの優先表を作り、合図を短く統一。
この基本を徹底すれば、ブロックされることへの恐れは薄れ、挑戦的なスパイクが増え、攻撃全体の質が引き上がります。継続的な反復と振り返りで、試合で生きるカバー力を磨いていきましょう。
コメント