試合でスパイクがサイドラインの外へ飛んだ瞬間に聞こえるワンチという声。
これは何を指し、どう判定され、戦術的にどんな意味を持つのでしょうか。
本記事では競技規則に基づく正しい定義から、審判の見方、チャレンジの活用、攻守それぞれの戦術、練習メニューまでを体系的に解説します。
現場で使えるチェックリストと比較表も用意し、初級者から指導者までが迷わず判断できる知識を整理しました。
最新情報です。
目次
バレー ワンチとは をまず正しく理解する
ワンチはワンタッチの略で、主に相手ブロッカーがボールに触れた接触を指します。
特にアタックがアウトに見える場面で、相手ブロックに触れていればワンタッチが認められ、攻撃側の得点になります。
日常会話の俗称であり、公式記録や審判用語ではブロックタッチと表記されます。
競技規則では、ブロックによる接触はチームのプレーと見なされますが、一般のプレー回数にはカウントされません。
つまりブロック後は同じチームがさらに3回プレーできます。
この扱いを理解しておくと、リバウンド処理やラリーの組み立てがスムーズになります。
ワンチはワンタッチの略
コートで使われるワンチは、ワンタッチの短縮形です。
意味は相手選手の身体の一部がボールに触れたこと、特にブロックでの接触を指すケースが大半です。
日本の現場で広く浸透した言い回しですが、公式文書では使用されません。
スパイクがアウトに見えても、直前に相手ブロックに触れていれば攻撃側の得点です。
この判定をめぐる主張やチャレンジで、ワンチという言葉が頻出します。
ブロックタッチの定義とルール上の扱い
ブロックはネット付近で相手の攻撃を止める行為です。
手や腕への明確な接触はブロックタッチとなり、ボールの方向が変わったかどうかは補助的な判断材料です。
髪やユニフォームへの接触は原則プレーの一部と見なされず、得点帰属の判断には直結しません。
ブロックタッチはチームのプレーですが、チームヒットには数えません。
そのためブロック後の最初の接触は1打目として継続可能で、ダブルコンタクトも許容されます。
この例外を知らないと、カバー時の判断を誤ります。
アウトとワンチの関係
攻撃側のスパイクが相手コート外に落ちた場合でも、途中で相手ブロックに触れていれば攻撃側のポイントです。
俗にブロックアウトと呼ばれる得点パターンです。
逆に相手に触れていなければ単純なアウトとなります。
サイドラインやエンドライン上の接触はイン。
ポールやアンテナ、支柱やネット外側のケーブルへの接触はアウトか反則です。
ラインとアンテナは判定の基準点として厳密に扱われます。
公式用語と俗称の違い
現場でのワンチという俗称に対し、公式ではブロックタッチ、もしくはタッチと表現します。
選手間のコミュニケーションではどちらでも構いませんが、審判や記録とやり取りする際は公式用語を使うと誤解がありません。
チーム内の共通言語として、練習時から用語の統一を図ると、試合でのコールやチャレンジ要請がスムーズになります。
ワンチの判定基準と審判のジェスチャー
ワンタッチの判定は主審を中心に、副審と線審の協力で行われます。
審判は接触の有無、接触部位、接触後のボールの軌道を総合的に確認します。
選手やベンチはジェスチャーを理解しておくと、次のプレーへの切り替えが速くなります。
主審のシグナル
タッチが認められた場合、主審は片方の手で相手コート側を示し、もう一方の手で自分の腕を軽く叩くタッチの合図を行います。
続けて得点側を指示してラリー終了を宣告します。
明確なシグナルは選手と観客への説明でもあります。
ネットやアンテナなど他の反則と見分けがつくよう、主審の動作は一貫しています。
選手はこの順序を知っておくと、抗議よりも次の準備に集中できます。
副審と線審の役割
副審はネット際の接触、ブロックフォールト、アンテナを重点的に監視します。
線審はインアウトとともに、ブロックタッチの合図として旗を上げる動作で主審に伝えます。
複数の視点を組み合わせることで正確性が高まります。
死角が生じやすいのはオポジット側の外側ライン付近や、速いクロスへのワンタッチです。
この領域では線審の観察が特に重要になります。
ボール接触の客観的基準
接触の事実は、指や手の変形、ボールの回転や速度の変化、音、軌道の微妙なずれなど複合要素で判断されます。
視認が難しい場合は最終的に主審の裁量となりますが、映像があれば補助的に活用されます。
選手側は主張の根拠として、触れた指の部位や感触を簡潔に伝えると伝わりやすくなります。
長い抗議は逆効果です。
よくある誤判定パターン
ボールの回転が強く、ネットに擦れて変化したものをブロックタッチと誤認するケース。
手前で味方が触れていたのを相手ブロックと誤認するケース。
手首のスナップで軌道が変わったのをタッチと見誤るケースが代表例です。
選手は体の正面で捉え、手先を散らし過ぎないことで、誤解を招かない明確な接触を作れます。
コーチは反復練習の中で、手の形と接触面を統一させる指導が有効です。
チャレンジシステムでのワンチ確認
トップレベルの試合ではビデオによるチャレンジシステムが導入され、ブロックタッチの有無を映像で確認できます。
タイムリーな申請と適切な項目選択が成功率を左右します。
要求できる項目とタイミング
タッチの有無、インアウト、アンテナ接触、ネット接触、サーブのフットフォルトなどが対象です。
タッチを確認したい場合は、ラリー終了直後に主審の許可を得て申請します。
遅延は権利喪失につながるため、ベンチと選手の合図を事前に取り決めておきます。
各大会で回数や運用は異なるため、試合前のミーティングで必ず確認します。
項目を誤ると再申請はできないのが一般的です。
映像で見るワンチの特徴
指先のわずかな反り返り、ボール表面の回転の乱れ、手の甲の微振動などが映像の手掛かりです。
サイドからのカメラに加えて、エンド側のカメラ映像が効果的です。
審判は複数アングルを総合して判定します。
チームの分析でも同様の視点を持つと、チャレンジの意思決定が迅速になります。
分析担当がベンチに明確なキーワードで伝える体制を整えましょう。
チャレンジの戦術的運用
流れが悪い時間帯に、確信度の高いタッチでチャレンジを行うと、得点と同時に流れを引き戻せます。
一方、確信度が低いまま乱用すると逆効果です。
ベンチは確信度、スコア状況、サーブ権の価値を加味して意思決定します。
コート内キャプテンには、主張を簡潔に伝える役割を担わせます。
ルールに即した範囲での主張はチームの権利です。
攻撃側の戦術 ワンチを取りにいくテクニック
高いブロックに正面から打ち負けないために、意図的に指先を利用してブロックアウトを狙うツールの技術が有効です。
相手の手の位置と角度を読み、最小リスクで最大の得点期待値を獲得します。
ツールとコース取り
基本は外側の指先を狙い、サイドライン外へ抜ける軌道を作ることです。
インサイドアウトのコースで指先に薄く当てると、高確率でワンチを誘発できます。
相手が外を締めたら内側の親指付近を狙う切り替えも有効です。
相手ミドルが遅れているときは、ブロックの継ぎ目に打ち込みます。
継ぎ目は手が割れやすくリバウンドも取りやすいゾーンです。
スパイクフォームと手首の使い方
肘を高く保ち、打点直前に前腕回内と手首の軽い回外で面を作ります。
厚く当てず、薄い接触で指先を弾くイメージが重要です。
打点が落ちると角度がつき過ぎ、ネットミスが増えるため注意します。
助走の最後の一歩で上半身を開き過ぎないこと。
体幹の安定が薄い接触の再現性を高めます。
トスとコンビで作るワンチ
高めのハイセットではブロックが整いやすいため、クイックやランニングセットで横ずれを作り、片手ブロックを誘います。
片手の指先は最もツールが通りやすい的です。
バックアタックやBクイックでのテンポ変化も有効です。
セッターは相手のシフトを読み、打者に外側の的が見えるトスを供給します。
打者はトスの頂点とネットとの相対位置で狙いを決めます。
リスク管理と判断
終盤での明確な数的劣勢では、無理なツールよりラリー継続のリバウンドを選ぶ判断も必要です。
相手の手が引いているときはツールが滑ってコート内に戻るリスクがあります。
状況に応じてスイング強度とコースを調整します。
ツールを狙うときはフォローカバーの準備を徹底します。
弾かれても二次攻撃で取り切る設計が勝率を上げます。
守備側の戦術 ワンチを防ぐブロック
ワンチを防ぐ鍵は手の形と角度、そして空中での身体コントロールです。
指先の強度を高め、コート内へ押し返す面を作ります。
手の形と被せ方
親指と人差し指の間を締め、指先をやや内側に向けて強く開きます。
肘を伸ばし切らず、肩から前へ出すことでネットの向こう側に手を被せます。
この被せが浅いと外側に逃げるワンチを許します。
手のひらを立てるのではなく、指の面で受ける意識が重要です。
前腕の回内で面を調整し、アタッカーの腕出しに追従します。
アンテナ外逃げのコントロール
サイドブロッカーはアンテナ外へ逃がさないために、外肩を落とし過ぎないこと。
外手の小指側が先に流れると、指先を利用されます。
内手でミート点を塞ぎ、外手は蓋をするイメージを持ちます。
アンテナとの距離を一定に保つフットワークも必須です。
踏み込みが深いと体が流れて外が空きます。
ブロック後のカバーとトランジション
完全に防げない前提で、ブロック後の弾きに対するディグ配置を決めます。
外側高めの弾きに対してはウィングが一歩外へ張ります。
中央からの弾きにはリベロが読みで対応します。
リバウンドを拾ったら速い攻撃へ切り替えます。
ブロックが整っていない相手に対して、逆サイドへ素早く展開します。
スカウティングでの対策
ツールを多用する打者の傾向をデータ化し、外指狙いが多い相手には外手強化の指示を徹底します。
打点の高さと助走角度からコースを事前に予測することで、被せの精度が上がります。
ミドルの遅れを減らすため、サーブで相手のコンビを崩し、単純化させるのが根本対策です。
配球を読めばワンチの機会自体を減らせます。
似て非なるプレーとの違いを整理
ワンチと混同されやすいのがネットタッチやレシーブタッチです。
ここでは違いを明確にし、現場でのミスコミュニケーションを防ぎます。
ネットタッチとの違い
ネットタッチはプレー中にネットへ身体が触れる反則です。
ワンチはボールと手の接触であり、反則ではありません。
接触対象がネットかボールかが最大の違いです。
レシーブタッチとの違い
後方のレシーバーがブロックをすり抜けたボールに触れるのは通常のプレーで、ワンチとは呼びません。
ただし審判の判定上はボールが誰に触れたかが重要で、軌道変化の根拠になります。
ブロックフォールトとの違い
相手のセッターのセットに対するブロックや、サーブに対するブロックは反則です。
また、ネット上で相手側のスペースに侵入してボールに触れるのも反則となります。
ワンチが成立しても同時に反則があれば、反則が優先されます。
| 項目 | 接触対象 | 結果 | 主なシグナル |
|---|---|---|---|
| ワンチ | 相手ブロックの手や腕 | 攻撃側の得点またはラリー継続 | タッチの合図後に得点指示 |
| ネットタッチ | ネット | 反則で相手得点 | ネット接触の合図 |
| ブロックフォールト | 相手のセットやサーブなど | 反則で相手得点 | 該当反則の合図 |
競技規則のポイント 最新の解釈と注意点
ルールの根幹を押さえると、判断のブレがなくなります。
細部の運用は大会要項に従い、事前に確認するのが基本です。
ブロックはチームの最初のプレーか
ブロック接触はチームのプレーに含まれますが、ヒット回数にはカウントしません。
よってブロック後も3回のプレーが可能です。
ブロック後の最初の接触は複数接触が許容される点も重要です。
ブロック後のボールが外に出た時の帰属
相手ブロックに触れた後でアウトになった場合、原則として攻撃側の得点です。
ただし、アンテナ外側を通って相手コート外へ出た場合など、別の反則が関与していればその反則が優先します。
アンテナと外側を通るボール
ボールはアンテナの内側を越えなければなりません。
アンテナやその外側を通るボールはアウトです。
ワンチがあっても、アンテナ接触が確認されれば反則となります。
ビーチバレーとの違い
ビーチでは接触の基準やプレー回数の扱いに室内と異なる部分があります。
特にブロック後の接触カウントやダブルの取り扱いが異なるため、競技間の混同に注意が必要です。
練習で身につける ワンチ感覚の養い方
薄く当てる、面を作る、被せる。
ワンチに関わる攻守の感覚は、意図した接触を再現できる練習で磨かれます。
ドリル例 初級
壁当てで指先タッチの感覚を養うドリルを実施します。
指を強く開き、薄く擦る接触でボールの回転を少しだけ乱すことを目標にします。
1分間の連続タッチを3セット行います。
ブロックフォームの静止保持。
ネットに沿って手を被せる姿勢を10秒保持し、指先の強度を高めます。
肩甲帯の安定化とセットで行います。
ドリル例 中級
セッターからのトスに対してツール狙いのスパイクを反復。
外指、内指、継ぎ目の3種類を指定して20本ずつ行います。
カバーを配置し、弾かれたボールの再攻撃までをワンセットにします。
ブロッカーは的を小さくする練習として、外手の角度維持ドリルを実施。
連続10本で外を締め、次の10本で内を締める切替をテンポ良く行います。
ドリル例 上級
実戦テンポでのコンビネーションから、打者が相手の手の変化を読んで瞬時に狙いを変える判断ドリル。
コーチが手旗で外締め内締めをランダムに指示し、スパイカーは打点直前に選択を切り替えます。
ブロック側はフェイクジャンプやレイトジャンプを混ぜ、アタッカーの意思決定を揺さぶります。
双方の駆け引きがラリーの質を高めます。
コーチングのチェックポイント
攻撃側は打点の高さ、助走角度、前腕回内のタイミング。
守備側は手の被せ、指先強度、外手の流れ。
映像でスロー確認し、数値化できる指標を一つでも設けると改善が加速します。
練習の最後にゲーム形式で適用し、成功率と意思決定の速さを評価します。
数週間単位でテーマを更新します。
よくある質問Q&A
現場から寄せられる疑問を簡潔に整理します。
判断に迷った時の指針として活用してください。
指先だけの接触はワンチになるか
はい、明確にボールに触れていれば指先だけでもタッチとして認められます。
音や軌道変化、指の反り返りが判断材料です。
ただし髪やユニフォームへの接触は対象外です。
相手のブロック以外の接触は
バックコートの選手やディガーが触れた接触は通常のプレーで、ワンチとは呼びません。
ただし誰が最後に触れたかはインアウトの判定に影響するため、審判は全ての接触を総合的に見ています。
タッチの有無を主張するマナー
主張はキャプテンが簡潔に行い、必要に応じてチャレンジを申請します。
ジェスチャーや大声での抗議は控え、次のラリーへ準備することがチームの利益になります。
ミドルやライトでの違い
ミドルは打点が高く正面の面が作りやすい反面、外指のツールは角度が出過ぎるとサイドアウトしにくくなります。
ライトはアンテナ際のスペースを使った外指ツールが有効です。
選手の利き腕と助走角度で狙いを最適化します。
実戦で迷わないためのチェックリスト
- 攻撃側 目的はブロックの外指に薄く当てる
- 守備側 外手が流れない角度で被せる
- 審判シグナル タッチ合図の後に得点指示を確認
- チャレンジ 権利と項目を事前に共有
- 練習 映像で接触面と指先の反りを確認
まとめ
ワンチはワンタッチの略で、実際はブロックタッチを意味します。
ルール上の扱いを正しく理解すれば、判定で迷う場面が減り、攻守の選択肢が広がります。
審判のシグナル、チャレンジの項目、判断の基準をチームで共有することが重要です。
攻撃は外指を中心とした薄い接触で得点期待値を高め、守備は手の被せと外手の角度でワンチを封じます。
練習では再現性のある接触とトランジションまでを一連で磨き、試合で成果を発揮しましょう。
本記事のポイントをベンチのチェックリストとして活用し、一つずつ現場に落とし込んでください。
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